2014年7月8日火曜日

改良版GTD? 最新のタスク管理手法「MYN」が欧米で静かなヒットの理由

タスク管理手法としてすでに古典となって久しいGTDですが、その本が書かれた当時はクラウド時代が到来しておらず、Toodledo・RTM・Nozbeをはじめとするさまざまなクラウドベースのタスク管理ツールでGTDを運用しようと、かつ、せっかくコンピュータを使うのだからその検索機能やフィルタリング機能を用いてより便利に活用しようと、多くのひとがさまざまな適用法を編み出してきました。

GTDを実際に運用すると出てくる悩みの一つは、ネクスト アクション(次の行動)リストが膨大になりがちであるという点です。実際に実行していく際に、それを上から順に機械的にこなしていくというのは現実的ではありません。実際にはそれらのタスクの中には、緊急性の高いものと、緊急性の低いものが混在しているからです。

「GTDのスーパーセット」ともいうべきMYN(Master Your Now)法は、すべてのタスクを信頼できるシステムに預けたうえでINBOXをカラにしてストレスをなくすという、基本はGTDとよく似た手法を唱えながらも、これに加えて、GTDの巷間よく言われるいくつかの弱点の克服を試みるものです。最近、英語圏でタスク管理に関する議論を読んでいるとよく出てくるようになりました。

もっとも大きな改良点は、「ワークデイ ナウ ホライズン」と呼ぶ10日後の地平を見すえたタスク管理を提唱している点です。その背景には、人が日ごろ自然にタスク管理の対象として意識している未来というのは1週間から2週間後ぐらいまでであるという認識があります。2週間より後よりも未来のタスクというのは、今気にするべきタスクであるというより、将来やりたいこと、すなわちGTDのMaybe/Somedayに近い存在としてとらえるのが自然だという考え方です。
地平線(ワークデイ ナウ ホライズン)以前の今日から10日間の期間を「ワークデイ ナウ」と呼びますが、この「ワークデイ ナウ」リスト内のタスク群は、さらに2つのリストに分割されます。今日絶対にやらなければならないタスク群を内容とする「クリティカル ナウ」リストと、10日間のうちにやりたいタスク群を内容とする「オポチュニティ ナウ」リストです。
一方、地平線(ワークデイ ナウ ホライズン)以後のタスク群を内容とするリストは、「オーバー ザ ホライズン」(地平線の向こう)リストと呼ばれます。

すなわちMYNでは、GTDのプラクティスに加え、「次の行動」群を緊急性に応じてさらに3つのリストに分けることがしくみ化されているのです。

「オポチュニティ ナウ」リストには、20個を超えるタスクを入れてはならないとされています。この制約は、真に近日中に行いたいことにのみ自分の注意を集中させるための工夫です。GTDではこれに対し、ネクスト アクション(次の行動)は、近日中に行いたいものも、そうでもないものも含め、すべていっしょくたにリスト内に列挙されることになり、どれから手をつけたらよいのかが実行時にわかりにくいきらいがあります。

その日のクリティカル ナウのすべてのタスクの実行が完了し、なお時間が余っていれば、オポチュニティ ナウ内のタスクに着手することが許されます。したがって、オポチュニティ ナウのリスト内容も、日々実行されて減っていくことが期待されます。減った分は、週次レビューの際に、地平線の向こう(オーバー ザ ホライズン)からオポチュニティ ナウへタスクを持ってきます。
逆に、オポチュニティ ナウの内容が20個を超えてしまった場合には、20個に収まるように、いくつかを地平線の向こう(オーバー ザ ホライズン)へ移さなければならないとされています。これにより、本当に向こう10日間のあいだに自分がこれらの厳選したタスクを完遂するのだというコミットメントを自ら持つことが可能となります。

「次の行動」群が緊急性に応じて3つのリストに分かれており、かつ、その内容が毎日ないし毎週きちんと更新されているという安心感を持つことにより、実行時には、その3つのリストのうちのいずれか1つのみを見つめ、その内容の実行にのみ集中すればよいという幸せバカ状態が得られることになります。具体的には、一日が始まったらまず、緊急性の最も高い「クリティカル ナウ」リストに属するタスクのみをすべて実行することにのみ注力すればよいのです。緊急性の比較的低い「オポチュニティ ナウ」リストに属するタスクが目に入ってきて心を悩まされることはないのです。「クリティカル ナウ」リストの内容をすべて実行しおえて初めて、「オポチュニティ ナウ」リスト内のタスクを実行することができます。逆にその際には、「オポチュニティ ナウ」リスト内のタスクのみを実行することに注力すればよく、もっと緊急性の高いタスクがあったのではないか、という不安で気が散らされることはありません。また、「地平線の向こう(オーバー ザ ホライズン)」リストについては、週次レビューのときにのみ見直せばOKですので、日々の実行時にその中のタスクが心を惑わすことは一切ありません。

さらに言うならば、「地平線の向こう(オーバー ザ ホライズン)」リストについては必ずしも、GTDで言う「次の行動」だけを含んでいなければならないということもありません。GTDですと、当分着手する可能性のない、緊急度の低いタスクやプロジェクトであっても、Someday/MaybeにせずActiveとしてある場合には、次の行動はどれだろうか、ということをきちんと考えてやらねばなりません。しかしそれはまだ先の話であり、ひょっとすると状況や心境の変化により実行しなくてもよくなる可能性がありますので、週次レビューの負荷を無意味に膨れ上がらせている可能性があります。とりわけ、GTDでは、導入時の最初の処理(収集完了後の仕分け)には大変な時間がかかりますが、MYNにおいては、必ずしもすべてのタスクを処理完了しておく必要はなく、多くの緊急性の低いActiveタスクはとりあえずただ「地平線の向こう」に放り込んでおけばよいため、導入のハードルがかなり低いのも特長です。

またMYNでは、「7つの習慣」的に、タスクをゴールやミッションと結びつけ、その実行に熱意を持つことができるような工夫も加えられています。これまでGTDの下からのアプローチと「7つの習慣」の上からのアプローチとの併用と調和をさまざま試みてきた方にとっても、MYNはひとつの答となる可能性があります。

以上の簡単な説明は、英語圏のネット上の情報(とりわけAmazonレビュー・Toodledoフォーラム)を元に私なりの理解をまとめたものです。
私自身はまだ原典を読んでいませんが、ひさびさに、原典を読んでみたいと思わせる内容です。
たとえば、地平線の向こうはテキトーでいいというネット上の説明については、それってGTDのSomeday/Maybeがテキトーでいいのとどう違うの、という疑問が現時点で私にはあります。
たぶん、そういうことも原典にはちゃんと書いてあるのだろうとおもいます。

http://www.amazon.co.jp/Master-Your-Workday-Now-Strategies/dp/097493044X/
『Master Your Workday Now!: Proven Strategies to Control Chaos, Create Outcomes, & Connect Your Work to Who You Really Are』
Michael Linenberger(著)
2010年刊

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